【大使活動報告】2021年6月22日午前 中川大使のケフネツ町訪問

令和3年6月22日

   6月22日午前、ケフネツ町を訪問し、コンコイ町長と面談しました。ケフネツ町は、コシツェ市の南方、ハンガリーとの国境に接する位置にあります。昔からハンガリーとポーランドを繋ぐ主要交易路上にあり、現在もハンガリー側では高速道路が整備され、近くスロバキア側でも接続する高速道路が完成し、ハンガリーと東部スロバキアのアクセスが格段に改善されることが見込まれます。
   コンコイ町長は、1990年以降、30年以上にわたりケフネツ町長を務め、町内のさまざまなインフラ整備や2000年代以降は工業団地を整備し、海外企業を誘致するなど、ケフネツ町の発展に尽力してきた有名町長です。その努力が実り、町長に就任したときはケフネツの人口は600人でしたが、現在は1,200人に倍増。また誘致した企業で3,500人の雇用を新しく生んでいるそうです。日本で言えば、「地方創生」の大成功例の立役者というところでしょうか。2009年にはスロバキア政府から叙勲を受けています。
   懇談では、1930年代生まれの御高齢を感じさせない力強い言葉で語られ、町長の地元ケフネツへの情熱と献身が強く印象に残りました。地域の指導者として大成功し、大統領や首相がケフネツ見学に来るくらいのスロバキアでの有名町長で、幾度となく国政進出の打診もあったそうですが、そういう話は一切断って、一貫してケフネツの発展を追求してきたそうです。
   コンコイ町長の夢はまだ終わりません。次なるチャレンジとして、英語・独語など外国語教育に重点を置く「ヨーロッパ統合学校」の建設に既に着手しています。多様性への対応能力のある次世代を育てることが最も大事なリーダーの仕事だとの町長の言葉には頷かざるを得ません。さらに、温水プール、フットボール場、陸上競技場などを備えた大規模「アクア・パーク」建設の構想も、縮小モデルまでは形になっていました。どこまでもケフネツの発展に人生を捧げているコンコイ町長の姿勢には頭が下がるばかりでした。コンコイ町長からは「日本との姉妹都市提携を考えたい」とのご要望を頂きました。時間はかかると思いますが、実現に向けてお手伝いできればと考えます。
   続いて、コンコイ町長にも同行いただき、ケフネツ町の産業地区とそこに立地するマレリ・ケフネツ社を訪問。ヴァイダ工場長とパワー・トレイン部門のプラントマネージャーのセスト・ギウサルナ氏から説明を受け、工場を案内してもらいました。同社は、主に自動車のエンジン燃料噴射装置や排気ガス処理システムなどの高度技術システムの設計、製造を行う企業です。もともと世界的に有名なイタリアの「マニエッティ・マレリ」としてケフネツに進出しましたが、2019年に日本の「カルソニックカンセイ」と経営統合し、統合後もマレリの名称を継続して使うことにしたものです。日系企業ですが、日本人職員はいません。コロナ禍ではありますが、欧州市場での需要が堅調であること、またマレリのような高度の技術製品への需要が引き続き強いことから、増収増益を見込んでいるとの説明は心強い限りでした。自動車用電子チップの世界的供給不足という予断を許さない要因はあるものの、コロナ禍でも、技術力のあるビジネスは生き残る見通しが立つのだということを実感しました。